検査が一通り終わって、今後の予定が少しずつ見え始めたころ、
父が、そばに来てくれた。

私の父は、もう20数年前に亡くなった。がんだった。
生前、あまり会話らしい会話をしたことがない。
私が高校卒業するまでは、一緒に住んでいたにもかかわらず、だ。
私の家族は、父との関わりに限らず、関係性の希薄な家族。
どこの家族もそんなもんかな、とも、ちょっと思うけど…。

だけど、父は私の何かの節目には枕元に現れるらしい。
一度目は、結婚するとき。

そのときは、
結婚相手とはもう一緒に暮らし始めていて、だけど、まだ籍を入れる前だったと思う。
私は前の晩から、ダンナの何かにとてつもなく腹を立てて
「明日の朝は起きない! ゴハンの準備なんてしない! もう知らない!」って感じで寝てた。

その翌朝。というか、早朝。
自分が、寝てるのか起きているのよくわからないような、覚醒の直前くらいのときだったのかな。
父は現れた。
枕元に座って、何か話しかけられる。でも、どんな話だったのか、まったく思い出せない。

けど、
「何かあったら呼べよ」
そのことばだけが耳に残った。

それからの結婚生活。その「何か」がいっぱいあって、結婚生活は3年でおしまい。


今回は二度目。
でも今度は、少し離れたところにうつむいたまま立っている。
立ち尽くすっていうのかな、ああいうの。
何も話しかけては来なかった。
悲しそうな。
寂しそうな。
詫びるような。

ごめんね。心配かけちゃってるね。